『知能爆発』では「可能性が高い」が15回爆発している?(笑)

「まえがき ── 世界を麻痺させる「超便利な呪文」

「その可能性が高いと考えられます」

このフレーズを目にしたときの違和感は、10年以上前から私の中にあったが、これが異常なほどの高頻度でメディアに表出するようになったのは、おそらくあの「コロナ騒動」の頃からだ。

市中感染の可能性が高い、クラスターが発生した可能性が高い、感染拡大の可能性が高い──といったフレーズが、テレビや新聞、ネット空間に文字通り溢れかえった。危険性の予測において、この無責任なフレーズが、まるで専門家やお役所の公式な「定型文」か何かのように社会全体へ広まっていったのだ。

結果として、「可能性が高い(低い)」というこのフレーズは大衆の脳にガッツリ刷り込まれ、「可能性高いピープル」が大増殖し、中学生までが「体育祭、延期の可能性高いよね」などと口にしているありさまだ(笑)。

個人の当て推量であっても、「〜だと思います」と言ったのでは相手にされず、承認も得られない。しかし、そこに魔法のフィルターを通して「〜の可能性が高いと思います」と変換するだけで、あら、不思議!周りからも、ネット上でも、さも客観的な分析結果であるかのように振り返ってもらえるようになったのだ(笑)。

これは、一時の流行語などではない。

明治以来、日本人が抱え続けてきた「メンタリティの病理」が、いよいよ末期症状として表面化しているのではないか? しかも昨今、AIという最新テクノロジーによって、その病理が最悪の規模で大増幅されているのではないか?

そうした強烈な危機感が引き金になって、私はこの書を書き上げた。

5年前にブログで『「可能性が高い」のおかしさに気づかない人々』という記事を書いてから、これまで4本の関連記事を世に放って警鐘を鳴らしてきた。しかし、これほどの致命的な論理破綻を問題視している人間が、驚くべきことに、この日本社会で私以外にほとんど見当たらない。その事実に、私は一層の危機感を覚えるのだ。

だからこそ今回、客観的なデータを基に系統的に書き直し、この欺瞞のシステムを奥深くまで切り開いて解剖し、一冊の書物としてまとめる必要があると思った。

「可能性が高い」という、たった6文字の短いフレーズ。しかし本書を読み進めるにつれ、そこには今日の日本人の論理的貧困と、ユルさとズルさの病理がこれ以上ないほど凝縮されて詰まっていることが、嫌というほどお分かりいただけるはずだ。

この本を読み終えたあなたの周りで、誰かがこの詐欺的なフレーズを口にしたり、ネットや本で目にしたりしたときの、あなたの引きつった顔と「あっ、例のフレーズだ(笑)!」という心の動きを思い浮かべてしまう。

しかし、最高に笑えるのは──。

この本を読み終わって数日後に、あなた自身が、うっかりでもいい、確信犯的にでもいい、この病的なフレーズを日常の中で口にしてしまう、カチャカチャと打ち込んでしまう、その瞬間を想像するときである(笑)。」   『「可能性が高い』は詐欺師のセリフ?」 のまえがき 3,4ページ。

「【図表:「可能性が高い」の論理と見かけ】

「可能性が高い」

論理的成立性

見かけ・印象

・「可能性」はあるかないかのどちらか

・論理破綻の無意味な表現

・「可能性」を有無と程度の二つの意味で使い分ける詐欺的トリック

・裁判官が「合法性が高い」と言うのと同じくらい馬鹿げている

・これが言えるのならば、「不可能性が低い」とも言えるはず(笑)

・専門家風で信頼性がありそう

・客観的な裏付けがありそう

・計量的、数値的な根拠がありそう

・話し手の見込みが、世界の側の事実のように聞こえる

論理の面から見れば、「可能性が高い」は成り立たない。ところが見かけの面では、専門家の言葉のように響き、何かを測った結果であるかのように聞こえる。論理の上では空っぽの表現が、印象の上ではあたかも中身の詰まった表現であるかのようにまかり通っているのである(笑)。まさに「詐欺的」と呼ぶ所以である。」上掲書43ページ

 

『知能爆発』に出てくる「可能性が高い」のリスト

このブログ記事は bioshok 有路翔太著『知能爆発』の主張については一切論じない。議論が混線するのを回避するためだ。ここでは「可能性が高い」がどれだけ使われているかを調査した結果を提示している。「可能性が高い(低い)」というフレーズは同書には15回あった。「可能性が高い、低い」というフレーズを問題にしている理由については、Amazon 「『可能性が高い』は詐欺師のセリフ?」 をお読みいただきたい。

このリスト作成には同書の Kindle版の検索機能を用いた。しかし、検索結果を一つ一つ確かめると、Kindle 検索には2つミスがあったので、それは欠番とした。

1) AGIに最初に到達する可能性がもっとも高い米国の政権が、
序章ページ16

2) は他の主体を大きく引き離す可能性が高い。
序章ページ18

3) ポジショントークが含まれている可能性が高いことには
第1章AGIとは何か、ページ46

欠) 能力の伸びが頭打ちになる可能性にも言及しており、確度の高い…
第1章AGIとは何か、ページ51
これはKindle検索のミスと思われるため、除外し、番号を付さない。

4) 他国を圧倒するようになる可能性が高い。
第2章AGI開発の現在地一ー競争・規制・国家戦略、ページ70

5) する研究アシスタント」になっている可能性が高い
第2章AGI開発の現在地ーー競争・規制・国家戦略、ページ77

6) AGIに最初に到達する可能性が最も高いにもかかわらず、
第2章AGI開発の現在地ーー競争・規制・国家戟略、ページ92

7) Al投資がさらに拡大する可能性が高い。
第3章経済爆発・技術爆発・産業爆発・知能爆発、ページ147

8) ペースを追いかけて広がっていく可能性のほうが高い。
第3章経済爆発・技術爆発・産業爆発・知能爆発,ページ147

9) 5年という期間は短縮できる可能性が高い。
第3章経済爆発・技術爆発・産業爆発・知能爆発、ページ163

10) むしろ規制がゆるやかになる可能性が高い。
第3章経済爆発・技術爆発・産業爆発・知能爆発、ページ170

11) 第二に、不可逆的である可能性が高い。
第4章超知能のリスク―-Alがもたらす破滅の、 ページ205

12) パー攻撃能力が強化される可能性は高い。
第4章超知能のリスク―-Alがもたらす破滅のかたち、ページ246

13) ほうが、人間の判断力で追える可能性が高い一
第6章未来を閉じないためにーー人類の応答が決まる10年、ページ322

欠) 解釈可能性は欺瞞的なAIを観察し、どちらの主張がより正しいかを
第6章未来を閉じないためにーー人類の応答が決まる10年、ページ328
これはKindle検索のミスと思われるため、除外し、番号を付さない。

14) 技術進歩」が起こる可能性が高いと結論づけており、
参考文献・注釈、 ページ374

以下は、「可能性が低い」の例

15) 実際に有効だった可能性は低いとされている)。
第4章超知能のリスク―–AIがもたらす破滅のかたち、ページ211

 

『知能爆発』は444ページの本であり、「可能性が高い(低い)」が合計15回出てきている。1冊の本に出て来る回数としては、特に多い印象がある。約30ページに1回の割合でこのフレーズが炸裂していることになる。ほとんど「煽り用語」となっている?ちなみに AI を使って文を作ると、「可能性が高い」が多くなる傾向があるように思う。そのことについては、『「可能性が高い」は詐欺師のセリフ?』で詳しく論じている。

Amazon 「『可能性が高い』は詐欺師のセリフ?」

コメント

タイトルとURLをコピーしました