知覚不可能な周波数である

知覚不可能な周波数である

シューマン周波数は 7.83Hz である。

ヒトでは通常、下は20Hz程度から、上は(個人差があるが)15,000Hzないし20,000Hz程度までの鼓膜振動を音として感じることができ、この周波数帯域を可聴域という。可聴域を超えた周波数の音は超音波という。可聴域を下回る、あるいは可聴域下限付近の低周波音は、これまで知られていなかったタイプの騒音被害(低周波騒音)を引き起こすものとして注目されている(低周波音参照)。なお、可聴域近傍の周波数の音は、振動として皮膚感覚などで感知できる場合がある。 (ウィキペディア「聴覚」より)

“超低周波公害”と言われているのは音波の方である。波長は数十m程度である。

シューマン周波数 7.83 Hzは電磁波であって、音波ではない。波長は地球の円周の長さである。下の図で言えば、波の 山から山、または、谷から谷 である。ハイエンドのスピーカーからの重低音や、高速道路周辺の住民がこうむる被害とはまったく別次元のものである。

 

 

 

YouTube などで検索すると、Schumann Resonance, Schumann Frequency と言いながら、ピー、とかプワーンプワーンといった電子音を聴かせる動画が出てくる。ヒーリング効果、リラックス効果、鎮静効果などを謳っている場合が多い。これらは、シューマン周波数とはまったく関係のない音を、これまたまったく関係のない映像といっしょにもっともらしく聴かせているだけである。こうしたCDがネット上で売られている。

また、シューマン周波数 を使った“音楽”なるものもたくさん出回っているが、そもそもシューマン周波数 7.83Hz は音ではない。まあ、ショパンの「雨だれ」が実際の雨の音ではないからといって文句を言えないのと同じかもしれない。しかし、考えようによっては、“天然素材”と言いながらポリエステルだったり、“天然果汁” と謳いながら人工甘味料だけのジュースを売っているのと変わらないだろう。消費者の無知に付け込んで儲けようとする業者は常にいる。そして、それらしい雰囲気だけで満足している消費者も多いので、この手のものはなくならない。

あらためて言っておこう。シューマン周波数 7.83Hz は人間の知覚、直感を超えたものである。それを感知できなくても、その存在を認めるかどうかはそのひとの知性のレベルにかかっている。

感知できなくても、オシロスコープによる計測によっていくらでも確認はできる現象である。しかし、それでも人間は自分のふだん慣れ親しんだ五感によってその存在の手応えを求めずにはいられないのである。

逆に、自分の慣れ親しんだ五感によって確認できないものは、存在しないものと考えてしまう。有害な電磁波、電磁場のほとんどは直接には知覚不可能である。そして、それらが濃密に混濁した危険な環境にいながら気づかずにスマホに夢中になっているいるひとは多い。外部世界をすべて手のひらに収めているという錯覚の中に生きている人は多い。その中ではすべてが心地よく感知できる。そして、感知できないものは存在しないと思いこんでいく。

感覚、知覚、五感はたしかに重要な情報チャンネルである。しかし、これらを過信し、絶対視することの危険も忘れてはならない。早い話が、放射線のほとんどは知覚不可能である。吐き気、めまいといったかたちで感知した時にはもう手遅れである。津波が襲ってくるのは五感で感知できる。しかし放射線が街をすっぽり覆っても、誰一人気づかないのだ。

感覚による認識の個人差はさほど大きくない。痛い、寒い、波の音、迫りくる暴走トラック・・・。しかし、知性による認識の個人差はとてつもない開きがある。生死を分けるのは主に後者である。そして、潜在的な健康被害に気づくかどうかも主に後者である。

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