北米大陸はニューヨークに
ダストロジー海外篇は、まずは近場からということで(1)(2)で東アジアの大都市はほぼカバーした。次はどこに行くべきかもさほど悩まなかった。アメリカである。順序として必然的にそうなる。そして、はるばる太平洋を越えてせっかくアメリカ大陸にまで行くのなら、北米大陸だけでなく南米大陸まで足を伸ばすのが合理的と判断した。北米大陸で最大の人口を擁する都市は実はメキシコシティで、2位がニューヨークである。現代におけるアメリカという国の影響力と文化的、経済的、技術的な重要性を考慮すると、日本のダストロジストはメキシコよりもアメリカの大都市を目指さざるをえないだろう。
南米大陸はサンパウロに
それでは南米はどうか?これも迷うことなくブラジルのサンパウロに決まった。迷う余地なく、機械的、自動的に決まった。人口規模、影響力の点でサンパウロは南米最大であり、2位はブエノスアイレス、3位はリオデジャネイロと続く。わたしはもともと南米にはほとんど関心がなく、自分がサンパウロに行くことになるとは思ってもみなかった。実はニューヨークにもまったく関心がなく、行ってみたいと思ったことは一度もない。ブロードウェイだのタイムズスクエアだのといった観光スポットも、今回多くの観光客が楽しそうに自撮り写真を撮っているのを横目で見ながら通り抜けただけだ。みんな「あのニューヨークに今自分はこうして来ているんだ!」という興奮と満足感に酔っているようで、街も毎日がお祭りのようだ。そういう華やかな街と浮かれた観光客をシニカルに眺めるのもたしかに観光だ。早い話が、仕事で行こうが、観光で行こうが、国内であれ、海外であれ、旅行先で目を開けていたらあなたは「観光客」なのだ。(笑)どんな旅行も必然的に「観光」なのだ。ただ、強いて言えば、サンパウロの方がニューヨークより、都市として、街として面白かった。ニューヨークに比べて洗練されていない分、エスニックな生活感に溢れていて、カフェに座って道行く人々を見ていると、何時間でも飽きることが無かった。サンパウロはタダで行けるならもう一度行ってもいいが、ニューヨークはタダでも行きたくない。
「観光とは差異を味わうことである」 ザウルス
昔フランスのプロバンス地方を旅行していた時、町のカフェで現地人が話しかけてきた。どこから来たのか?というお決まりの質問等々に、たどたどしいフランス語であれこれ答えながら、こう言ったことがある。「Tourism, c’est goûter la différence, n’est-ce pas? 観光って、差異を味わうことじゃありませんかね?」田舎のオヤジにはちょっと哲学的すぎたかなと思いながらも、旅先で自分が実感したことをそのまま言ってしまったのだ。すると、その現地人は「Exactement ! C’est vrai ! たしかに!その通り!」と、すぐに返してきた。その時さすがフランス人は違うな、といたく感心した記憶がある。「差異」という抽象的な概念をその田舎の現地人は即理解したのだ。日本人で「観光って、差異を味わうことじゃありませんかね?」と耳で聞いて即座にその意味を了解できる人は1パーセントもいないだろう。自分としてはあのときポロっと出たフランス語の命題は今でも真理だと思っている。
いずれにせよ、「ダストロジー海外篇」はあくまでもサンプル採集が目的のフィールドワークなので、滞在日数も1つの都市にせいぜい1日か2日。名所巡りもお土産ショッピングもあったとしても最小限。入国審査の際は毎回「「Tourism!」と答えているが、もし、「ダストサンプルの採集のため」などと言おうものなら、別室に連れて行かれて数時間にわたって取り調べを受けることになるだろう。(笑)
ニューヨークでは地下鉄の駅と車内でサンプル採集する予定だった。日本の山手線のカウンターパートとして比較したかったのだ。地下鉄の電車の車内はさほどではないのだが、駅やホームからのサンプルは煤すすけた鉄粉のマイクロダストが予想以上に多かった。ダストロジー海外篇ではいくつか決まった採取ポイントがある。空港内施設、機内、タクシー、ホテル、レストラン、駅(のロッカー等)、電車内である。こうした普通の旅行者が通過するところはどの社会でも多くの人が利用しているわけで、一般的なダストの採取ポイントになるのは自然なことだ。
中国と韓国にはいくらでもあった貸しロッカーが、残念なことにアメリカにはないことが事前の調査でわかっていた。2001年のいわゆる9.11同時多発テロ事件以降、テロ対策として設置が禁止されてしまったのだそうだ。一方サンパウロには空港にあることがネットで確認できたのだが、実際行ってみるといくら探しても見つからなかった。もちろんサンパウロでもニューヨークでも貸しロッカーに代わるような背の高い箱型の設備があればいいのだ。実際、ATM、消防設備、自販機などで用は済んだ。てっぺんが見えない程度の高さが理想なのは、1)普段人目に触れないので清掃も頻繁になされていないためダストが豊富にある。2)沈殿して着地する平面が高いほど大きなゴミやホコリや髪の毛といった夾雑物が少ないからである。 「ダストロジー(2):ダストロジーの基本原理は攪拌と沈殿」
さて、今回のニューヨークとサンパウロでは34回サンプル採取を行った。帰国後それらをスライドガラスに貼り付けてほとんどのフィラメントを画像化し、その数は2700近くに及ぶ。酸化グラフェンのフィラメントが東アジアだけでなく、太平洋を越えた南北アメリカでも見つかることを山のような証拠で証明している。前回同様、すべてを以下のクラウドで公開している。中を開けて、どれからごらんになってもかまわない。
「ダストロジーアーカイブ」: 20251110-15 ニューヨーク、サンパウロ

一部を以下に掲載しておく。これはニューヨークの地下鉄の車内の分。





上のサムネイルのうちいくつかを拡大版でお見せする。「ダストロジーアーカイブ」ではすべてが大きな画像で閲覧できる。「ダストロジーアーカイブ」: 20251110-15 ニューヨーク、サンパウロ



ダストロジーアーカイブ: 20251110-15 ニューヨーク、サンパウロ
さて、比較のために日本の山手線の車内での採集結果を挙げておこう。











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